Se connecter第299話 躁病
「本当に会いたかった……」
――身を焦がすほどに。
蓮の声は甘くとろけるようで、その美しい瞳は美月に釘づけになり、熱を帯びていた。
美月は腰に回された手の熱さを、ひどく強く感じた。
――熱い。
この先に何が待っているのか、考えるまでもなかった。
次の瞬間、彼女の唇が蓮の唇で塞がれた……
エアコンの設定温度は、蓮がとっくにかなり低くしていた。だが今は、その冷たさがちょうどいい。
何しろ、蓮の体温は今にも沸騰しそうなほど上がっていたのだから。
二人の服はドアのあたりから一枚、また一枚と床に滑り落ち、
第302話 書斎で寝るなんて絶対に嫌その言葉を聞いた蓮は、伸ばしかけた手を慌てて引っ込めた。――書斎で寝る? そんなの、絶対に嫌だ。それこそ命に関わる。彼はすぐさま素直に言い直した。「分かった、着替えてこい!」美月はそんな彼を見て、鼻で笑った。「入ってこないで。外で待ってなさい」そして、蓮の目の前でクローゼットの扉を閉めた。蓮は言葉を失った。「……」――今夜、これで二度目の締め出しだ。いったいいつになったら、着替えを手伝わせてもらえるんだ?ちっ、せっかくイケメンの俺が着替えを手伝ってやるっていうのに、それすら断るなんて。本当に分かってないな。幸い、美月は蓮のそんな考えに気づくはずもなかった。もし知っていたら、間違いなく張り倒していただろう。彼女はクローゼットの中から自分でワンピースを一着選んで着替えた。それから、下ろしていた髪を適当にまとめて結い上げると、全体的にすっきりとした印象になった。やがてクローゼットの扉を開け、外へ出た。蓮はずっと外で待っていた。着替えを終えた美月の姿を見ると、やはり目にわずかな残念そうな色が浮かんだ。――ああ、もったいない!何着ても綺麗なのは間違いないけど、さっきの赤い寝間着は……めちゃくちゃ色っぽかった。
第301話 蓮の下心、分かりやすすぎる美月は浴室に入ってから、着替えを持ってくるのを忘れたことに気づいた。幸い、浴室には大きなバスタオルが用意されていた。――まあ、いいか。上がってから着替えればいい……とにかく、今さら彼に服を持ってきてもらうのは御免だ。ちょうど入浴しようとした、そのときだった。外からノックの音が聞こえてきた。「ドアを開けてくれ」美月は言葉を失った。「……」――この男、また来たの? まだ諦めていないわけ?彼女は気のない声で答えた。「何? 用があるなら、あとにして」「いや。着替えを持ってきてやったんだけど、いらないのか?」――もちろん、いるでしょ……「ちょっと待って」美月は清潔なバスタオルを一枚手に取り、体に巻きつけてからドアを開けに行った。蓮の手に下着と寝間着が握られているのを見ると、美月は思わず口元を引きつらせた。そして、すかさず彼の手からそれらをひったくると、目の前でぴしゃりとドアを閉めた。蓮は言葉を失った。「……?」――あぶねっ。危うく挟まれるとこだった。「本当にマッサージしてやらなくていいのか? 俺の腕前はかなりのものな
第300話 俺は何でもできるからな!美月が目を覚ますと、隣にはもう蓮の姿がなかった。けれど、ベッドにはまだ温もりが残っていた。出ていってから、それほど時間は経っていないらしい。時間を確認しようとして、外に目をやった。もうすっかり暗く、かなり遅い時間のようだった。そこまで考えて、美月は思わず口元を引きつらせた。――午前中から始まって……午後になってもずっと、あんなことをしていたんだ。つまり、ほぼ一日中ってことになる。ったく。この男の体力、本当にありえない……いや、ありえないどころか、もはや恐怖だった。最後にこっちが本当に限界だったからよかったものの、あの男、きっとまだ続けてたに違いない。ぐう、とお腹が鳴り、美月はようやく現実に引き戻された。一日中あれだけ体力を消耗したうえ、昼食も夕食も食べ損ねたのだから、お腹が空くのも当然だった。起き上がって何か食べるものを探そうとした、そのときだった。寝室のドアが開き、あの男が入ってきた。美月は彼を見るなり、思わず白い目を向けた。――やっぱり、まだいたのか。蓮は、美月が目を覚ましたのを見て、嬉しさを隠せなかった。白い目を向けられても、彼にはそれがたまらなく可愛く思えるのだ。蓮は足早にベッドのそばまでやってきた。「お腹が空いたのか? 何か食べたいなら、持
第299話 躁病「本当に会いたかった……」――身を焦がすほどに。蓮の声は甘くとろけるようで、その美しい瞳は美月に釘づけになり、熱を帯びていた。美月は腰に回された手の熱さを、ひどく強く感じた。――熱い。この先に何が待っているのか、考えるまでもなかった。次の瞬間、彼女の唇が蓮の唇で塞がれた……エアコンの設定温度は、蓮がとっくにかなり低くしていた。だが今は、その冷たさがちょうどいい。何しろ、蓮の体温は今にも沸騰しそうなほど上がっていたのだから。二人の服はドアのあたりから一枚、また一枚と床に滑り落ち、ベッドのそばまで点々と続いていた…………「お医者さんを呼ぶって、どういうつもりよ?」優香はひどく怒っていた。――私が病気だって言いたいの?それとも……さっき蓮に精神病扱いされたことを根に持って、本気で私のこと、精神病だと思ってるわけ?悠真は表情を変えなかった。優香が反発することは予想していたので、あらかじめ理由も用意してあった。「お前の傷を診てもらうためだ。そのまま傷跡が残ってもいいのか?」優香は驚いたように目を見開いた。「……お医者さんは、私の傷を診に来たの?」&nbs
第298話 嫌いじゃないなら好きってことじゃないか!二人は三十分ほど歩き回ったが、まだ荘園の半分しか見ていなかった。蓮はそろそろ切り上げたくなり、帰ろうと促した。「もう十分歩いただろ。俺も疲れたし、少し休んでからまた見ればいい。とりあえず戻ろう!」表向きは平然としていたが、内心で何を考えているのかは、本人にしか分からない。美月もそろそろいい頃だと思い、うなずいた。「ええ!」蓮はその返事を聞いただけで、内心嬉しくてたまらなかった。「よし、じゃあ行こう!」二人は歩いている間ずっと手をつないでいた。帰るときも、蓮はその手を離そうとしなかった。二階に上がると、蓮はあることを思い出し、意気揚々と口を開いた。「まずは書斎に行こう!」その言葉を聞いた美月は、彼が何をしようとしているのかすぐに察した。「別に、サインしなくてもいいんじゃない? 誰の名義になっているかなんて、そんなに大事なことかしら?」――もう、こんなにたくさんもらってるのに。これ以上もらうのは、さすがにちょっと……蓮はその言葉を聞いた途端、目の輝きを失った。「お前、そんなに俺のことが嫌いなのか?」美月は困惑したように彼を見つめた。「……どうしてそうなるの? あなたのことが嫌いだったら、そもそもこうして一緒にいるわけないでしょう?」
第297話 二人きりの世界を邪魔されてたまるか「これ、食べてみろ。なかなかうまいぞ」蓮はおかずを一つ、美月の皿に取り分けた。「ここの料理人は本国から呼び寄せたんだ。何でも作れるぞ」「見た目もきれいだし、すごくおいしそうね」美月は言った。蓮はその言葉を聞くと、すぐに促した。「だったら、早く食べてみろよ」美月はうなずき、一口かじった。途端に目がぱっと輝いた。「これ、本当においしいわ!」美月が心から気に入った様子を見て、蓮まで嬉しくなった。――一流の料理人を呼んできて正解だったな。「気に入ったなら、もっと食べろよ。ほかにもいろいろあるぞ。これもなかなかうまいから、食べてみろ。それに、デザートはこっちで雇ったパティシエに作らせたんだ。これもきっと気に入るはずだ」――気に入ったものは、何でも食べさせてやりたい。「うん、自分で取るから、そんなにたくさん取らなくていいわ。あなたも早く食べて」蓮は内心、幸せでたまらなかった。――やっぱり、俺のことを気遣ってくれてるんだな。「食事が終わったら、まず少し休もう。飛行機で来たんだから、疲れただろ? 時差も調整しないとな。目が覚めたら、外に食べに行ってもいいし、ここで食べてもいいし……」「今日はここで食べましょう。あちこち出歩きたくないわ」美月は、その「休もう」という部分だけ、意識して聞







